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スタジオ防音工事施工例|埼玉県

埼玉県での注文住宅の施工例です。スタジオ防音室つきの住宅で性能評価もほとんど最高等級に致しました。今回は防音工事の内容に特化して紹介していきたいと思います。構造躯体は2×4で高性能グラスウールにて断熱工事をしております。まずは外観から

      

      

外観には石灰岩で出来た石を貼っています。土地の間口が小さいものですから車を2台どう入れるかを考えねばならないプランニングでした。縦列駐車させないで車を入れる計画を立てたのです。当然ですが結果も良好で予定通り車を2台縦列ではない止め方をしております。

         

それでは防音工事の内容です。ご覧のとおりベタ基礎の耐圧盤の上にまず気密シートを張ります。上段左です。その上の躯体は外壁で、建物本体です。何をする工事かと言いますと床の上に床を作る。浮き床構造にしているのです。

そもそも音の伝わり方は空気伝播音と固体振動音があります。空気伝播音は文字通り空気を伝ってくる音で、スピーカーから流れる音や鳥のさえずりなどがこれです。次に固体振動音はドラムを叩いた音や2階で子供がはしゃぎまわった時に出る音で物に伝わる音です。

こっちの固体振動音は厄介でこれを抑えるのは容易ではありません。また空気伝播音でもジェット機のキーンという音も厄介でどんな物質でもあの高音域は突き抜けます。抑えるのは容易ではありません。

この防音工事、実は性能を上げれば上げるほど費用が倍々ゲームのように高くなりがちです。費用対効果の割合が少ないのです。ですからどこまで防音するか、予算はいくら?というところから計画せねばなりません。

ちなみに音は数値で表せます。「デシベル」と言い、音の大きさを計量するとき最も基本となる物差しで数字が小さいほど静かで大きいほどうるさいという事になります。音圧と言えば分かりやすいでしょうか。下の表に簡単にどの程度かを知ってください。

20dB以下 極めて静か すやすや 深夜の都外住宅地
20~40dB 静か ささやき声 深夜の都心住宅地
50dB 日常騒音 小さい声 エアコンの室外機
50~60dB 日常騒音 普通の声 水洗便所の音、車のアイドリング
60~80dB うるさい 大きな咳払い 掃除機、新幹線車内、ボウリング場
80~100dB 極めてうるさい 怒鳴り声 地下鉄構内、サクソフォン、ピアノ演奏
100~130db 聴力機能に障害 叫び声 リベット打1m、ドラム、トランペット演奏

 

とあります。ダイケンの防音工事の提案にベーシック(B)防音か、アドバンス(A)防音か、それともスペシャル(S)防音かと聞いております。一般の建物の構造が20dBカットらしいです。それでB防音が30dBでA防音で40dB、S防音ですと50dBカットと紹介されており今回の工事は最低S防音並みにしようと考えお客様と計画しました。

音は単純に引き算でします。つまり予想される音-遮音性能=外部に漏れる音です。

今回はグランドピアノで激しく鍵盤を叩いた場合を130dBとし、遮音性能をS防音50dB以上に設定しましたので130-50以上=50~60dBと設定しました。

上記の表を見ると日常騒音、普通の声とあります。これぐらいなら住宅地でも文句は出ないだろうと予測を建てたのです。気になるのが実際に演奏するのはほとんどが真夜中の深夜ですからギャンブル的に計画してスタートしたと言えます。

で結論ですが、実際は工夫も凝らしましたので真夜中でもほぼ音が漏れない状態までにしました。これにはビックリで予想を上回る結果となりました。

工事内容に戻ります。ベタ基礎の耐圧盤にビニールシートを張り、その上に96kのグラスウールの板を2枚重ねで敷きました。下段左を見てください。基礎の立ち上がりも行い2重になっています。

      

   

その上に亜鉛鉄板を敷きました。床を作るのにメッシュを入れサイコロを入れました。緩衝材として浮き床構造にグラスウールの板を入れたのですから濡れると良き事ありません。ですから更に気密シートでコンクリートが下に流れないようにしたのです。これで耐圧盤と切り離された浮き床が出来上がりました。この床も壁、天井もあるスタジオを制作した方からのノウハウを参考にさせて頂いたものに施工面で工夫したものになります。

      

   

これは壁です、左上段のピンク色は建物外部側のグラスウールではなく間仕切壁の中に高性能グラスウールを入れました。このスタジオは壁が4面あります。2面は外部側、2面は室内側です。よって室内側は家族だけだといってもうるさいのはごめんですので間仕切壁も高性能グラスウールを充填しました。当然気密シートは不要ですので気密シート、いわゆるベーパーバリア工事は室内側はしておりません。

上段左側の写真をよく見ると右側に気密シートが張っています。実はここは外部側です。ではその次からの黄色のグラスウールの写真は何でしょう。これが壁の内側に壁を作った壁なのです。

途中の壁を作る工程の写真が無いものですから飛んでいますが、外壁、間仕切壁の内側に空気層を設けつつ、外側の壁と接していない内壁なのです。2重壁とでも言いましょうか。サッシの写真もありますが、サッシも外部側のサッシと内壁側のサッシとも高性能な遮音性能の壁を取り付けています。空気層50ミリ以上ある2重サッシなのです。

そしてこの部屋に入るドアもダイケンの防音ドアを2枚続きであり、扉を2枚開けないと室内には入れません。徹底しています。

ちなみにこのグラスウールは32Kの重さを使用しました。防音室の重要な要素、躯体作りにおいて質量は大変重要な要素なのです。誰でも簡単にご想像いただけると思いますが、質量の重いものほど遮音性能は高いです。

例えば断熱材でもグラスウールより、発泡系のウレタンより、セルローズファイバーの方が遮音性能は高いのです。理由はグラスウール16Kとしましょう。ですがセルローズファイバーは壁に55K詰めるのです。かなり違います。重いです。その違いについては百聞は一見に如かずで会社にセルローズファイバーの見本がございますのでご案内できます。ご興味のある方はいらしてください。

      

天井です。野縁を組みました。狙いは何度も言うようですが空気伝播音をなるべく外部に伝達させない事です。つまりこのスタジオの場合は床の上に床、壁の内に壁、天井の下に天井を作るスタジオ防音室、かつ重複しますが固体振動音がなるべく伝達しない構造躯体。それでいて演奏者が気持ちよく過ごせる空間作り、それは反射音ばかりではなく吸音を含めた室内残響音計画です。それでいて長時間の滞在にも耐えられる室内空調にも気を付けました。

野縁は防振吊り具を使い、壁四面にも直接接触しない為にもグラスウールの板を緩衝材として入れております。ちなみにツーバイフォーを売りにしている会社で良く吊天井を耳にします。ですが実際は建物躯体から離れておらず野縁を気休め程度に入れ「吊天井にしてますから2階の音は大丈夫です」と豪語している会社がありますが、大誤です。

それを説明するなら吊天井にしてますから梁の重量からくる天井の仕上げ材、例えばクロスの割れなどを防ぐ効果がありますと説明して欲しいです。決して防音効果は躯体が繋がっている以上気休め程度です。それからその吊天井の場合省令準耐火構造にするなら9ミリなら石膏ボード2枚張りです。15mmの石膏ボードなら1枚張りです。

2階の防音効果を高めるなら防振吊り具を仕様するなどして欲しいものです。それでも周りとの一体化は避けられないのでやはりツーバイフォーの一つの欠点と言える2階の音は在来工法と比べると相対的に不利になっています。あくまで相対的にですが。是正できない訳ではありません、念のため。

      

   

この防音室は完全密閉です。当然の処置なのですがこれだと室内の空気環境は人間の出す炭酸ガスでどんどん汚れます。また完全な自然環境でもないので建材からくる揮発性のVOCがでない事もありません。加えて持ち込まれるピアノや楽器類、家具類からもVOCは発生し続けます。となると換気計画を立てなければなりません。

ですが換気計画は壁に穴を開けるので必然と音が外部に漏れる原因となります。この矛盾を解決する為に防音換気扇なるものがあります。

上記の写真がダイケンの防音換気扇です。このスタジオはS防音以上を目的としていますから一番性能を発揮する計画でダクトを廻しました。ご覧頂ければ分かると思いますがものすごく厚みのあるダクトですね。この防音換気扇は50dBカットするそうです。50dBですので少し足りないような気がするのですが、できるだけダクトを廻す計画をしたのでこれ以上やりようが無く、音漏れが大きいようなら外部のフードを見直すという事でお客様より了解を得ました。

完成時外部のフードからあまり漏れないので助かりました。これは監督が工事の際きっちりとマンションの梁の様なダクトスペースの中にも工夫をしたからなのです。

ここで換気扇で空気環境は解決しました。ですが今度は温度的な室内環境です。これはエアコンでしかないのですが、このエアコン計画をどうするかで悩みました。なんせ専用の部材がないからです。そう、エアコンも外部と繋がる穴があるからです。

そこでこのスタジオの場合はこのスタジオの隣には3帖ほどの編集室を設けておりますので一旦ダクトをその部屋に抜き、その部屋から外部へ持っていく計画にしました。そうするとスタジオには換気扇以外の穴は無い事になるので見事に問題を解決しております。

そうそう、この防音換気扇は1種換気で強制排気、強制給気です。

      

上記の写真は前後しますが石膏ボードを張る前の工程です。 黒いシート遮音シートです。これを施してから石膏ボードを2枚張りしています。防音建材でダイケンは何種類も壁材を出していますがあえて遮音シートに石膏ボード2枚張りを選択しました。なぜかというと遮音という観点から見て一枚の建材より素材の違う物を混ぜた方が遮音効果が望めるからなのです。

音、これは周波数です。いろんな周波数帯があり、素材を混ぜる事によって多数の周波数帯域に対応出来る事となるのです。是非ご記憶下さい。ちなみに遮音シートは壁用です。床用ではありません。床は遮音マットです。

たまに聞く話として他のビルダーが2階の床の音を軽減する為に遮音シートを敷きますと言っている話を聞きますが壁用は壁用ですので床には使ってもあまり意味がありません。私はメーカーに確認済みです。では、何故遮音マットを使わず遮音シートを床に施すかと言いますと単に安く済むからです。それでいてお客様はツーバイの欠点である2階の音を軽減できると信じてくれるのでその方法を採用しています。あるいは単に遮音シートの正しい使い道を知らないかです。

それと石膏ボードのつなぎ目を良く見てください。換気扇のところもです。

目地になにか詰まっていますがこれは遮音コーキングです。気密性を高める効果があります。徹底しました。目地にバッチリ大工さんに入れて頂きました。見えない部分も含めバッチリ入れております。

これだけバッチリと気密化をしたこのスタジオはあまりの静けさに恐怖が湧いてくるのです。これは私の感じた感覚ですが、この完成したスタジオに入った私は、人はすごく外部の音に依存しながら生活しているのだなと思いました。それぐらいの静けさでした。

      

いよいよ吸音材の施工です。スタジオは遮音、防音だけでは駄目です。演奏者が気持ちよく演奏するために吸音も必要なのです。壁2面に施しました。吸音材は50ミリのものです。そして天井には吸音効果のあるソーラトンを採用しました。これは電磁波抑制にも効果があります。

      

      

防音室スタジオの完成写真です。ここでの写真からは見えませんが外部からの連絡の為にフラッシュライトを取り付けています。聴覚障害者用のものです。防音室なものですから当然インターホンの音など聞こえません。訪問客がわからないのです。また家族が2階などからの呼び出しに声やインターホンのチャイムなどでは聞こえませんのでフラッシュライトを点滅させる事にしたのです。これなら問題なくスタジオで演奏できるはずです。

これでようやくスタジオは完成しその出来栄えもお客様より絶賛の嵐を頂きました。外部に出て激しくピアノを叩いてもらいました。ベートーベンです。しかし音漏れは耳を澄まさないと聞こえません。さすがにスピーカーからのドラム音は低音の衝撃音みたいに多少感じますが、あの程度なら近所から絶対にクレームはありません。

気になりました防音換気扇のフードからもささやき程度しか聞こえず大成功に終わりました。最後に気になる施工金額ですが有名なヤマハのアビテックスの半額以下で済みました。しかも性能は凌駕しています。最後に他の写真です。

      

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2011年3月14日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:建築技術

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